今の会社に移ってから、多くの時間を採用活動に割いている。どこの会社も共通かもしれないが、とにかく情シス部門は人が不足しており、弊社もご多分に漏れずなので、積極的に頑張っている。
ありがたいことにたくさんの応募を頂く中、申し訳ないのだが、マッチしない方もそれなりの数含まれるのも事実。
それらの応募内容や面接の会話、自分が転職活動したときのことなどを振り返ってみると、選考が進む人には共通点があり、逆にそれがないと選考はなかなか進まないということがよく分かる。
2つ以上のタグ
特に、30代前半〜40代前半くらいの社会人10年以上の中堅ポジションにとっての共通点として感じるのは、最低でも2つのタグがちゃんと見えることだと思う。
その人の強みを評し、それらに関する仕事を任せられるか、というポイントになるのがタグだと考えたときに、これらが最低2つは必要だと思う。「ISMSの内部監査」とか「IDaaSの構築と運用」とか「ヘルプデスク経験」とか。
「タグ」については、岡島悦子氏の著書「抜擢される人の人脈力―早回しで成長する人のセオリー」がとても分かりやすいので、キャリアを考えるときにまず読んでみるのもありだと思う一冊。そもそも「タグ」について定義してきた本だから分かりやすいのは折り紙付き。
職務経歴書を見ていると、一見タグらしきものが多そうな人も多いのだが、やってきたことや、関わったことを並べているだけのことも多い。求めているタグは、やってきたことではなく、あなたはその分野で一人で勝負できるか、という観点であり、本人の自信。
そして、このタグが2つ以上ある人がまず土俵にあがると思う。エキスパートであったりプロフェッショナルな世界なら、1つ勝負でも全然良いが、そういう人の話ではなく、もう少し一般的な人の場合を考えている。なぜなら、情シス部門だから。
エキスパートでない以上、これは強みというのが1つしかないと、それ以外のことは出来ないの?となってしまう。やってほしいことは1つではない。2つ、3つ・・・いくらでもある。
タグという観点が大事な理由として、「新しいことにチャレンジしたい」という人も見かけるが、自分のキャリア年数や年齢と見比べて考えないといけないと思う。もちろん大幅に、本当に大幅に年収を下げてもいいのであれば、それは選択肢としていいと思うが、転職活動の軸は、今あるタグでピボットしていくことにあると思う。これは企業側の立場になれば単純に理解できること。
自分のタグと募集要項のマッチ具合
ピボットという点からいくと、2つ以上タグがあれば良いだけではない。moto(戸塚 俊介)氏の著書「転職と副業のかけ算」の中で、その通りと思ったのが、以下の文。
「相手が求めていることに対して、自分ができること」を伝えるのが基本です。
「転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方」moto(戸塚 俊介)(著)
これが出来ていない人がとても多いと思う。自分のタグが、相手の求めていることに答えられないといけない。なぜなら大前提として「これができる人に来てほしい」という企業としての絶対条件があるから。そしてその条件は、募集要項に示されている。
職務経歴書の時点からそれに答えるように書くべきだと思うし、募集要項にうまくマッチできないのであれば本当にその募集に応募するのかは考えた方がいいと私は思う。
エージェントを使っている人に多いのが、一度作った”汎用的な”職務経歴書をエージェントがおすすめしてくれた複数の企業に一斉にばらまくケース。こういうのはひと目で見抜けるし、マッチしているように見えないのであまり印象に残らない。それでも書類通過できる人は相当の経験やスキルセット、もしくは会ってみたいと思わせる表現力が書類にこもっている。
可能性や企業との出会いのチャンスを増やす点からもばらまきが悪いとは言わないけど、募集要項に自分のタグと、提出する書類がマッチしているかはしっかり見極めた方がいいとは思う。
次のタグ
もう一つ大事だなと思うことがある。
そもそものマッチ具合とは別に、次のタグを作ろうとしているかが大事なポイントの一つ。これは面接で見るポイントにもなる。縁がありこの仕事に就くことになったとき、数カ月後、もしくは1、2年後にどういうタグを増やそうと思っているか。それは、この会社、この仕事だから出来ると感じて応募してきているのか、を見る。
そこに、明確な目的や目標があって応募してきた人と、そうでない人ではここにすごく差が出てるように感じる。そのあたりに、企業とのカルチャーフィットや、長めに働いてくれそうか?という視点でのジャッジも入ってくるので、やはりそのあたりが語れないと、評価は低くなってしまう。
実際、役員などの最終面接を通過した方の結果コメントを見ると「当社と本人の今後のビジョンが一致しており、長く活躍してくれそうに感じた」というのが多い。
逆に、次のタグでこれは違うと思うのは「~を学びたい」「~を経験したい」という言葉。中堅どころはそれは言わない方がいい。学ぶ姿勢は大事だし必須だが、企業は育てたいのではなく即戦力で活躍してほしい。そのため、いかに即戦力でありながら、次のタグを増やそうとしているかを示せることが大事だな、と思う。「学び」を示すのではなく「さらなる成長」を示すのが正しいのではないかと感じている。
日々こういう点について考えているわけだが、そんな中で、知人から転職活動について相談されることもちょくちょくある。そのときに、何がまず一番大事だと伝えているかというと、やはり自分の棚卸につきると思う。そして、それをもとにした職務経歴書の作成だと思う。
相当な時間と、相当な推敲をかけるくらいの方が絶対良いと思う。1日で仕上げた職務経歴書とかはパッと見で分かるし、内容も薄いなーって感じる。棚卸をしっかりし、職務経歴書を徹底的に考えて作ることで、自分の本当の強みを伝えられるようになるし、しっかり作られた職務経歴書であれば、少し手を加えるだけで応募する会社に合わせたものにバージョンアップさせることも可能。
同じタイミングで転職活動している他人の中には、自分の棚卸や職務経歴書の作成のために、専門のコンサルタントに何十万も支払い自分を仕上げて望んでいる人もいる。そういう人と同じ土俵で戦うこともある、と思ったら、そんな手抜きなもので勝負できるわけないということに気がつけるんじゃないかな、と思う。
つまり、中堅の転職活動はの勝負はスタートがかなり大事、ということで。
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